つぎに、体細胞遺伝子検査です。
体細胞ってわかる?
ぎゃんぎゃんぎゃん!!!
体細胞遺伝子検査
遺伝子検査に使われるからだの細胞はおおきく、体細胞と生殖細胞に分けられます。
体細胞というのは、体の大半の組織を構成する細胞で、体細胞遺伝子検査でわかるのは、後天的に生じた遺伝子バリアントです。
後天的に生じた遺伝子の変化なので、次世代に受け継がれない(遺伝しない)ものを調べます。
具体的には、以下の悪性腫瘍遺伝子検査やゲノムプロファイリング検査がそれにあたります。
内容の詳細は次回以降にしますが、ざっくりその目的がわかるようにしたいと思います。
悪性腫瘍遺伝子検査
悪性腫瘍というのは何か想像できますか?
腫瘍というのは、細胞が無秩序に増殖した組織のことです。
これには良性のものや、悪性のものがあります。
良性腫瘍というのは、病理学的に悪性所見がないということです。
病理学的な悪性所見というのは、顕微鏡で細胞を見ても、悪さをする細胞の顔つきではない、ということです。
逆に、悪性腫瘍は、病理学的に悪性所見があるということです。
顕微鏡で細胞をのぞくと悪さをする顔つきをするということです。
悪さをする顔つきというのは、周りの細胞を巻き込んでいたり、細胞の境界線が不明瞭で形状が不均一・不規則であったり、周りの組織に侵食して広がっていたり、細胞の核が濃くなっていたり、といったような特徴があります。
悪性腫瘍はいわゆるがんですね。
がん、というのは細胞内の何が原因でできるか分かりますか?
それは、遺伝子の変化です。
それは、遺伝子バリアントができることともいえます。
「がんは遺伝子の病気」きいたことはありませんか?
細胞にたくさんの遺伝子バリアントが蓄積していくと、様々な遺伝子の機能が喪失したり、機能が亢進する可能性が高まります。
たとえば、細胞増殖に抑制的に働く遺伝子が機能喪失すると、細胞の増殖スピードがあがります。
この原因遺伝子ががん抑制遺伝子です。
またたとえば、細胞増殖に促進的に働く遺伝子が機能喪失すると、細胞の増殖スピードがあがります。
この原因遺伝子ががん遺伝子です。
がんの原因になる遺伝子はたくさん知られていますが、いくつか主要ながんの原因になる遺伝子の変化があります。
これをドライバー変異といいます。
体細胞遺伝子検査では、バリアントを変異と呼ぶ慣習が残っているので、ドライバーバリアントとはいわず、ドライバー変異のといいます。
また、蓄積したバリアントのうち、がんの原因とは考えられない遺伝子の変化があります。
これをパッセンジャー変異といます。
ドライバーは運転手、パッセンジャーは乗客ですね。
がんの治療のうち、主に進行がんの治療である抗がん剤治療は、昔から細胞毒性のある化学物質による治療が主流でした。
しかしここ20年ほどで、遺伝子の変化(ドライバー変異)に応じた効果を示す分子標的薬による治療が主流になってきています。
この分子標的薬の多くは、特定のがんで特定の遺伝子の変化(ドライバー変異)をもっている人が治療の適応となっています。
そのため、悪性腫瘍遺伝子検査は、分子標的薬の効果予測・適応について、特定の1つから複数の遺伝子のドライバー変異の有無を調べる検査です。
有名なものにEGFR遺伝子やBRAF遺伝子があります。

悪性腫瘍ゲノムプロファイリング検査
ゲノム?
プロファイリング?
わかりますか?
ゲノムとは・・・下記を再確認ください。
【6】ゲノムとは
プロファイリングとは・・・分析をした結果をもとに推測を行うことです。
悪性腫瘍ゲノムプロファイリング検査も遺伝子がターゲットですが、より網羅的というイメージでゲノムという言葉が用いられています。
悪性腫瘍ゲノムプロファイリング検査は、分子標的薬の効果予測・適応について、特定の数十から数百の遺伝子のドライバー変異の有無を調べる検査です。
この10年で、たくさんの遺伝子の変化を調べられる方法が開発されました。
それは次世代シークエンス(NGS:Next Generation Sequencing)です。
シークエンス?
次世代?
シークエンスの直訳は「配列」ですが、業界では遺伝子の塩基配列解析のことを「シークエンスする」と言っています。
遺伝子の塩基配列解析は、従来よりサンガー法という方法を用いて行われてきました。
しかしながら、サンガー法は時間とコストがかかる方法で、もっと時間もコストもかからずたくさんの配列を解析できる方法が開発されました。
それが、次の世代の塩基配列解析という意味で次世代シークエンス(NGS)と言っています。
次世代シークエンスが開発されてから10年近く経っているので、もはや「次世代」ではないのですが、未だに次世代シークエンス・NGSといっています。
一応、サンガー法も現役だからですかね。。。
技術的な話になってしまいましたが、話をもどしましょう。
昨年2019年に、その次世代シークエンスを用いて一度に数十から数百の遺伝子を解析し、悪性腫瘍遺伝子検査よりも多くの分子標的薬の効果予測・適応について調べることができる悪性腫瘍ゲノムプロファイリング検査が保険適応となりました。
悪性腫瘍遺伝子検査では、個別の遺伝子を分析していたのですが、それらを一度に分析できるイメージです。
ですが実際は、がんの進行状況によって、悪性腫瘍遺伝子検査をするのか、悪性腫瘍ゲノムプロファイリング検査をするのか、適応となる検査が異なるので、そんなにシンプルな話ではないんですよね。
次回以降はこれらの検査をそれぞれもう少し詳しく見ていきますね。
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