遺伝子バリアントの各論のつづきです。
次に塩基配列の変化のうちの塩基置換により、タンパク質のアミノ酸がストップコドンになってしまうものをみていきましょう。
ストップコドンて知っとるかい?
すとーーーっぷ!!!
ナンセンスバリアント
塩基置換によりストップコドンが発生するバリアントのことをナンセンスバリアントといいます。
野生型:TGT(Cys:システイン)
変異型:TGA(*:ストップコドン)
ストップコドンは3種類あります。
TGA
TAA
TAG
このストップコドンがエクソンの途中に発生することにより、翻訳されるタンパク質が正常よりも短くなってしまいます。
通常よりも前にストップコドンが発生した場合の影響は2つ考えられます。
1つ目はタンパクの機能への影響、2つ目はmRNAへの影響です。
タンパクの機能への影響
通常よりも前にストップコドンが発生した場合の影響の1つ目はタンパクの機能への影響です。
個々のタンパク質によりますが、シンプルに考えると、タンパク質は正常よりも短ければ短いほど、正常な機能を失う可能性が高くなると考えられます。
例えば、1800アミノ酸のタンパク質が300アミノ酸になるようなイメージです(仮の話です)。
また、正常なストップコドンよりも数アミノ酸短くなったような場合に、正常と機能が変わらないようなこともあります。
例えば、1800アミノ酸のタンパク質が1797アミノ酸になるようなイメージです(仮の話です)。
このように、タンパク質が正常よりも短くなることをトランケーションといいます。

mRNAへの影響
通常よりも前にストップコドンが発生した場合の影響の2つ目はmRNAへの影響です。
通常よりも前にストップコドンが発生した場合、そのDNAから合成されたmRNAは不安定になり、分解されやすくなります。
mRNAは分解されてしまうと、タンパク合成されなくなってしまいます。
そのため、タンパクの機能以前にそのタンパクがつくられなくなってしまうということになります。
この現象をナンセンス介在メッセンジャーRNA減衰(NMD:Nonsense-Mediated mRNA Decay)といいます。
このNMDは比較的新しい概念ですが、100%起きるわけではないので、そこには注意が必要です。
このようにナンセンスバリアントがあると、NMDによりタンパク合成量が少なくなる/タンパク合成しなくなるとともに、トランケーションによりタンパクの機能もなくなってしまう可能性が高くなる、と理解することができます。
以上がナンセンスバリアントの話ですが、がんの発生を抑えるようなはらたきをする、がん抑制遺伝子なんかが原因となる遺伝性のがんなどでは、比較的このナンセンスバリアントの頻度が高いですね。
REFERENCES:
An Introduction to Genetic Analysis. 7th edition.
How DNA changes affect phenotype
All Termination Events Are Not Equal: Premature Termination in Yeast Is Aberrant and Triggers NMD
Nadia Amrani and Allan Jacobson.
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