動物の身近な遺伝として、犬の毛色の遺伝の話をしましょう。
うめちゃんは黒柴やけど、柴犬の黒毛の遺伝の仕組み、分かるかい?
わからんワン!
柴犬の毛色の遺伝
動物の毛色の遺伝に関するエビデンスをもとに、柴犬の毛色の遺伝について考えてみます。
まず、柴犬の毛色の種類は5種類あります
・赤:大多数の茶色の柴犬
・胡麻:赤ベースに黒の差し毛
・黒(ブラック&タン):うめこ(裏白(腹側の白毛)・マロ眉あり)
・劣性黒:裏白・マロ眉なし
・淡赤:白柴のこと
下にいくほど数が少なくなります。
柴犬の有色の毛色を決めている遺伝子座(染色体上の位置)はA遺伝子座(アグーチ遺伝子座)といい、A遺伝子座には4種類の遺伝子があり、4種類の色を規定しています。
・Ay遺伝子:赤
・Aw遺伝子:胡麻
・At遺伝子:黒(ブラック&タン)(アグーチ・タンポイントの略とされる)
・a遺伝子:劣性黒
アグーチ遺伝子は褐色や黒色を呈するメラニンを合成するためのチロシンキナーゼという酵素タンパクをコードしています。
アグーチ遺伝子のGene SymbolはASIP(Agouti Signaling Protein)です。
これは特にメラニンのなかでもユーメラニン(黒色~褐色)とフェオメラニン(黄色~赤褐色)の合成量を決める因子のようです
柴犬の毛色の遺伝はメンデル遺伝で説明されます。
柴犬のアグーチ遺伝子型の優劣関係は下記です。
Ay>Aw>At>a
赤>胡麻>黒>劣性黒
赤柴の毛色の遺伝
Ay(赤)が最も優性なので、片親からAy(赤)を受継ぐと、もう片親からAy(赤)以下の劣性形質のどれを受継いでも子犬は赤柴です。
Ay/Ay=Ay/Aw=Ay/At=Ay/a=赤柴
赤/赤=赤/胡麻=赤/黒=赤/劣性黒=赤柴
柴犬の大多数が赤柴(普通の茶色の柴犬)である理由がわかると思います。

胡麻柴の毛色の遺伝
Aw(胡麻)の優劣関係は2番目なんで、Ay(赤)にのみ形質を隠されます。
片親からAw(胡麻)を受継ぐと、もう片親からAw(胡麻)以下の劣性形質を受継いでも子犬は胡麻柴です。
Aw/Aw=Aw/At=Aw/a=胡麻柴
胡麻/胡麻=胡麻/黒=胡麻/劣性黒=胡麻柴
黒柴の毛色の遺伝
黒柴のAtの優劣関係は3番目で、Ay(赤)とAw(胡麻)に形質を隠されます。
片親からAt(黒)を受継ぐともう片親からAt(黒)以下の劣性形質を受継いでも子犬は黒柴です。
At/At=At/a=黒柴
黒/黒=黒/劣性黒=黒柴
aの頻度は稀なので基本はAt/Atです。
真黒の劣性黒柴はa/aでしかなりえません。
つづく・・・

REFERENCES

Dreger DL et al. J Hered. Sep-Oct 2011;102
ASIP agouti signaling protein [ Canis lupus familiaris (dog) ]
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